能「翁」( おきな)
本曲は、天下泰平の祈りを謡と舞によって表現する神事的な演目です。まず、翁の露払い役である千歳の力強く颯爽とした舞で大地を鎮めます。太夫は面を掛け翁の神を我が身に宿らせて荘厳な謡と舞で国土安穏を祈ります。
( 面掛式：通常と異なりシテ方のみで、囃子は小鼓と笛で行います。)

能「葵上」( あおいのうえ)
光源氏の正妻の葵上は、物の怪にとりつかれ病の床にありました。梓弓（ あずさゆみ）の音で霊を呼ぶ「梓の法」の名手、照日（てるひ）の巫女を招き、物の怪の正体を明らかにすることになりました。
　巫女の法に掛けられて姿を表したのは、光源氏より７歳年上の義理の姉で愛人でもある六条御息所（ みやすどころ）の生霊です。密かに源氏の姿を見ようと訪れた加茂祭の車争いで葵上に敗れ、屈辱の中、嫉妬に駆られ、葵上の魂を抜き取ろうとします。
　家臣たちは、御息所の激しさにおののき、急ぎ偉大な法力を持つ修験者（しゅげんじゃ）横川（よかわ）の小聖（こひじり）を呼びます。小聖が祈祷を始めると、御息所の心に巣くっている嫉妬心が鬼女となって表われます。恨みの塊となった御息所は、葵上のみならず祈祷をしている小聖にも襲いかかるという展開です。激しい戦いの末、御息所の怨霊は折り伏せられ怨念を断ち切り、悟りを開いて、心安らかに成仏するのでした。

狂言「千鳥」( ちどり)
　太郎冠者は主人に酒屋へ行き、酒を買ってくるように命じられます。しかし酒屋へのつけがたくさん溜まっているため、酒屋は酒を売ってくれません。なんとかして酒を持って帰ろうと、太郎冠者は津島祭の話をして機会をうかがいますが・・・
　つけがたまっている酒屋から酒を買ってこいと主人に命じられた太郎冠者が、なんとか亭主の隙を見て酒を手に入れようと、祭りの様子を身振りを交えて演じるところが見所の狂言です。津島祭とは愛知県の津島神社のお祭りで5 0 0 年余りの歴史を持つ荘厳・華麗な川祭です。